「捨てること」が当たり前じゃない世界を。-食料廃棄ゼロを目指した社会づくり-

まだ食べられるのに廃棄される食品、いわゆる「食品ロス」は日本で年間522万トン(令和2年時点)。
これは、世界中で飢餓に苦しむ人々に向けた世界の食料支援量(2020年で年間約420万トン)の1.2倍に相当する。

国連によるSDGs(持続可能な開発目標)の目標12である「つくる責任 つかう責任」は持続可能な生産消費形態を確保することを目的としており、これまでの大量生産大量消費から、少ない資源で生産性をあげ良いものを使えるようにし、さらには廃棄自体も減らす社会構造を作っていこう、という目標である。

「捨てること」が当たり前になっている日本の食品業界を変えるため、世界的に関心が高まっているSDGsのテーマに食品業界から切り込んだ「シェアシマ」を運営するICS-net株式会社の創業の秘密、そしてその想いに迫る。

ICS-net
CEO 小池 祥悟
企業理念
「世界の食品流通を『Re-design』する」

サービス名
食品メーカー・食品工場向け業務改善DXクラウドサービス「シェアシマ」

ICS-net

代表紹介

「シェアシマ」をローンチし、食品原料を紹介したいサプライヤーと、食品原料を探したい企業ユーザーをマッチング。食品メーカーや食品工場の業務改善DXクラウドサービスまで一貫して提供。DXを強化し、登録企業の販路拡大や商品開発を支援。

第46回経済界大賞では「金の卵」として選出される。

食品業界の現実と日本の衰退を目の当たりにして

杉浦:小池さんは経済界の金の卵として選ばれるほど、今後さらなる成長が期待されるスタートアップとして認められていますが、そこに至るまでの創業ストーリーをお伺いしたいです。

小池:私は食品メーカーに約20年勤務していて、ちょうどその会社は僕が入った時に約300億。会社を辞める時には450億まで売り上げを伸ばしていましたが、その会社では総務と経理以外の仕事は一通り経験しました。

色々な役職の経験を通して、会社が自分のブランドを守るために、まだ食べられるのに仕方なく在庫を捨てなきゃいけないという文化を目の当たりにしたり、海外へ調達の仕事でインドネシアとベトナムに出張に行った時にどちらの国でも、「日本の企業とは取引したくない」と言われたことがありました。

理由を尋ねると、

「対して買わないのに、品質にうるさくて最後に値切る。それだったら中国やヨーロッパに売る」と言われました。その時に日本の国力っていうのが弱ってきているなとすごく感じましたね。

杉浦:日本の企業と取引したくないと直接言われたことがあったのですね、、日本の企業は歓迎されやすいのかと思っていました。

小池:日本はやっぱり裕福で、元気というイメージはありましたが、私は出張で海外よく行っていましたが、行くたびに変わっていく中国の経済発展を目の当たりにし、「日本は食品を捨ててる場合じゃないな」と思いました。いずれ食べるものがなくなるんじゃないかなっていう危機感も次第に芽生えました。

そこで、今の日本の食品業界の現実のために自分にできることってなんだろうと考えたのが「シェアシマ」を作った理由の一つです。

また、以前の会社で商品開発をしていた際に原料が見つからないという問題にもよく直面していた現実があり、であれば、もうそのような原料捜索難がなくなる仕組みを自分で作ろうと思い、起業し今に至ります。

杉浦:小池さんは食品業界を通して日本の国の衰退を自分で体験し肌で感じていたんですね。

小池:感じていました。やはり海外に行き、商談をした時に日本は買い負けしていると痛感しましたね。私は食品の値上がりが止まらない今が、言い方は悪いですが、正常だと思います。国にもよりますが、アメリカ行けば、マクドナルドも1500円くらいする、ヨーロッパとかも外食は普通に高いです。日本だけ今までこんなに値段が安かったのがすごいですよ。適切な価格で食品を提供して、それが各社の利益になって、皆さんの賃金になって、というのが本当は一番綺麗なサイクルだと思います。

世界の食品流通を『Re-design』する「シェアシマ」とは?

杉浦:日本の食品業界を変えようとしている小池さんの提供するサービス「シェアシマ」とはどのようなサービスなのでしょうか?

小池:「シェアシマ」は食品開発のための原料検索サービスのプラットフォームです。

行く当てがなくなって捨てるしかなかった食品が、他の会社では使えるというケースは多々あります。この仕組みが上手く回れば、これまで廃棄していた食品原材料を有効活用できるようになると考え、食品原材料の売り手と買い手がマッチングできるプラットフォームとして作りました。買い手側は売りに出されている原材料を検索したり、欲しい原材料に関して掲示板にオーダーを書き込んで、そこで売り手とやり取りしたり出来ます。これまでは廃棄するしか選択肢がなかった食品の買い手をリアルタイムで探せることで、製造工程における食品ロスを減らすことが可能となります。

杉浦:なるほど、地理的な条件や情報不足などが理由で全く取引実績がなかった企業間での売買が成立することで可能性が大きく広がりますね。

「シェアシマ」として新しい挑戦も視野に入れているのでしょうか?

小池:今はアップサイクル特集というのも始めています。私の目標は食品を捨てない社会をつくることなので、賞味期限が近くて仕方なく在庫になっている物を売り手の方々に出してもらってセカンダリーマーケットを作るか、もっと別なものとして新しい食品開発するか、という試みをしています。

杉浦:自社からも新しい商品を出す試みをしているのですね。

個人の成長は会社の成長に

杉浦:小池さんはいつも誰とでもフラットに接している印象ですが、会社の社風やメンバーの特徴などはあるのでしょうか?

小池:メンバーの半分はリモートですが、やはり働きやすいのが目標なので社風は割とラフな感じです。下は23歳から上は50歳台まで幅広く、中国人の方も働いていますが、代表、取締役、セールスなどみんながそれぞれの役割を明確にして働いているので「社長だから」「部長だから」という昔ながらのサラリーマンのような文化はありません。

成長意欲の高い方が多い弊社では、会社のことも業界のこともシステマチックなことも自分で勉強して成長していく人が多い印象を受けますね。

杉浦:それぞれが意見を出し合ってこそ良い意見が生まれるということですね。ただ、会社は学校じゃないという考えの方もいるかと思いますがそこに関してはどう思われますか?

小池:そうですね、私は個人の成長なくして会社の成長はあり得ないと思っているので、個人個人のキャラクターを大事にしていく会社にしていきたいと思っています。

杉浦:もうすでに国籍も年齢層も多様性豊かで働くだけでも世界基準に触れられそうですね!

将来を担う若者への想い

杉浦:小池さんが今の若い世代に期待していることや伝えたいメッセージについて教えていただけますか。

小池:「諦めるな」というメッセージを送りたいです。成長意欲というのは個人としても会社としてもとても大事と思います。今インターン生が5人いますが皆さん優秀ですね。

しかしながら、成長意欲のない学生は辞めていきます。言われたことをやるだけでなく、それ以上のことをできるかが大事になってきますね。ビジネスでもそうですが、顧客の考えていること以上のことをしない限り、やっぱりそこに成長はないじゃないですか。だからプラスα、常に考え続けることを大事にしなきゃいけないと思います。

あとは、これだけ情報過多の世界になってきているので、情報整理能力とアウトプット力は大事だなと感じます。

杉浦:まさに!とても共感します。成長を実感できる働き方や情報整理能力などの重要性は私も日々実感しています。

最後になりますが、小池さんの会社で働くことで得られるものについてお伺いしたいです。

小池:「世界」を知ることができます。

杉浦:様々な役職を経験し、いろんな国へ行っていた経験もあり、現在も国籍も年齢も多様な会社を作り上げている小池さんだからこそ説得力のあるお言葉ですね。

現代社会、そして世界から注目されているSDGsに食品業界の面から取り組んでいる「シェアシマ」は食品業界の常識を覆し、新たな食品流通を可能にしていくため、日本だけに留まらず、世界からもさらに注目されていくと感じています。

ICS-net株式会社のこれからのさらなる進化と活躍を楽しみにしております!

本日はありがとうございました。

インタビュアー:杉浦 志穂

◉DX化:テクノロジーを活用して業務プロセス、プロダクト・サービスや事業・経営を変革すること

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