株式会社Liberty 代表取締役社長
寺田 健吾氏
起業家、文筆家。群馬大学在学中に小説を出版し、渋谷スクランブル交差点にある「大盛堂書店」に並び初版完売。IT系商社を経て2018年に独立、2019年5月に株式会社Libertyを創業。ライティング代行事業やアパレル事業など展開。起業家育成型のオンラインスクールなども手掛ける。LGBTという自身の特性を活かしたブログや小説の執筆などもおこなっている。
<文・hackjpn 吉田 浩>
<写真・hackjpn 橘 敏輝氏>
株式会社Libertyの代表取締役社長を務める「てらけん」こと寺田健吾氏。
大手企業を退職後ゼロから起業し、わずか3年ちょっとで年商1億円を達成したノウハウを武器に「お金・時間・場所・ 人に縛られない自由な起業家を増やす」という思いを抱き活動している。
寺田氏が展開する事業は多彩だ。企業向けに商品のキャッチコピーやメルマガなどの執筆代行をはじめとするセールスライティングやSNSマーケティングなどを手掛ける一方、コンシューマー向けにはコピーライティング、SNSライティング、マーケティングの仕組みづくりなどに関するノウハウを提供するオンライン教材を販売する。
他にも、女性向けウェブメディアの買収・運営(現在は売却)、身体の大きな男性向けのファッションブランド「LoveLoose/ラブルース」の運営、また、自身がゲイであることを公表していることから、LGBT向けお悩み相談サービスを創設するなど、携わる領域は幅広い。
「自由に楽しく」をモットーとし、独自のワークスタイルを体現している寺田氏だが、現在に至るまでには紆余曲折があった。そんな中でもブレなかった軸は何なのか、これからどんな展望を抱いているのか、話を聞いた。
もともとは個人のピアノ教室として4名の生徒からスタートし、1年間で50人もの生徒を抱えるまでなった三星氏。
音楽教室としては十分成功しているにもかかわらず、日本全国、さらには世界を視野に展開しようとしている理由は何なのか。事業拡大の先にどんな世界の実現を目指しているのか。
独占取材で明らかにする。
「書くこと」を軸に数多くの事業を展開
さまざまな領域で活躍する寺田氏だが、全ての活動の軸にあるのは「文章を書くこと」だ。大学生時代に初めて小説を出版したのを皮切りに、ブログやSNS、メールマガジンなどに綴る文章が、収益を生み出す源泉になった。
「特に文才があったとは思っていませんが、気が付けば書くことが身近にあったという感じです」
こう語る同氏が文章を書く際に意識しているのは「感情的価値と解像度」だという。感情的価値とは、分かりやすく言えば人の喜怒哀楽を最も的確に表現する単語選び、ストーリーづくりを重視すること。そして、解像度を高めるために必要なのは、事象を脚色せず、ありのままの言葉で伝えること。そのため、セールスライティングなどにありがちな「人生が激変」「資産が倍に増える」といった誇大表現の安易な使用には疑念を示す。
「人生が変わるというのであれば、具体的にどう変わるのか。たとえば僕の教材で勉強すれば翌月からどういう状況になるのか、事実を捻じ曲げずに書くことを意識しています」
SNSで集客を増やそうとする際にも、大事なのはフォロワー数やインプレッション数よりもコアなファンをいかに増やせるか。そのためにオフラインの感覚でターゲット顧客と接し、血の通った文章を考えることが必要だという。
これまで教材を購入した受講生は累計約1千人に達する。ゼロからビジネスを育てたい個人や既存の事業をSNSの活用で拡大したい経営者、副業を考えている会社員など、寺田氏の文章術を学んでビジネスに生かしたいという声は多い。同氏の人生に共感して、自己啓発のために購入する層も増えている。
もともとは個人のピアノ教室として4名の生徒からスタートし、1年間で50人もの生徒を抱えるまでなった三星氏。
音楽教室としては十分成功しているにもかかわらず、日本全国、さらには世界を視野に展開しようとしている理由は何なのか。事業拡大の先にどんな世界の実現を目指しているのか。
独占取材で明らかにする。
収益増加をもたらしたビジネスの自動化
人生をコンテンツ化して成功「起業家×小説家」として独自の道を歩む自由な働き方を謳歌する寺田氏だが、学生時代に壮絶ないじめに遭ったり、ゲイである自覚に悩んだり、社会不適合者として廃人のような生活を送ったりと、現在に至るまでにはどん底の苦難を味わってきた。
文章の書き手としても、一足飛びで成功したわけではない。大学生時代に恋愛小説を出版した経験はあるものの、当初は文章で生計を立てる考えはなく、卒業後は大手企業に就職。しかし、過酷な労働環境と時間拘束に絶望し2年で退職することになる。
本格的に文筆活動を再開した寺田氏は、まずニュースサイトのまとめブログや恋愛コラム、企業からの依頼で商品レビューなどを書き始めた。とはいえライターの報酬相場は1文字1円未満という厳しい世界。「1日2万文字も記事を書いて、PCを打つ手が攣ったりしていました」と、当時を振り返る。
来るもの拒まずで片っ端から案件を受注していったが、自分が本当に書きたいことが書けない状況にストレスも感じていた。そこで、自身のビジネス経験や人生の軌跡を発信する方向に舵を切り、セクシャリティも公表し、リアルな自分を表現していくことにした。楽しさと共に収入も増え、ほどなく月商100万円を達成。その過程で得たさまざまな経験をコンテンツ化し、支持者をさらに増やしていった。
短期間でビジネスを確立できた大きな要因は、仕事の仕組みづくりと自動化にある。起業して1 年半ほど経った時期にそれまで発信の場として使っていたnoteをやめ、メールマガジンに主戦場を移行。顧客リストをSNSやブログから拡充する仕組みを作って、メルマガでのコンテンツ販売をスタートした。意識したのは、前述した感情的価値に訴えかける文章だ。寺田氏が発信する情報は読者の心をつかみ、労力をかけずとも大きな収益を生み出すようになっていった。
「AIが進化しても書く仕事は消えない」ーー
「今は目標を達成した部分もありますが、ずっと文章に携わってきて日本語が好きなので、この先もやはり文筆活動を軸としていきたいですね」と寺田氏は語る。動画メディアの台頭やAIの進化 によって、テキストメディアの作り手には逆風が吹く。そんな時代にあっても「人間の心と言葉は消えないので、ライターという職業は消えないと思っています」と力を込める。
寺田氏が成功した理由の一つは、AIには書けない、経験を元にしたオリジナルな物語を言語化し、それが消費者の心を掴んできたからだ。
文筆を武器とする起業家として活躍する一方、2023年夏にはフォロワー計50万人の恋愛系インフルエンサーとの共著による恋愛短編集『祈りのゆくえ』をリリース。「〝LGBT×恋愛〟をテーマにした作品を中心に、今後も執筆を手掛けていきたい」と、小説家としての活動にも意欲を燃やす。
起業してから短期間で自由な働き方と生き方を手に入れた寺田氏だが、長年どん底を経験したからこそ、反発するエネルギーも強かったのかもしれない。そのストーリーと生き様は、これからも多くの人々を魅了していくだろう。