2年で年商10億円。
原 貴則氏が握るD2C成功の秘訣とは。

MePicks CEO 原 貴則氏

シンガポールを拠点に戦略顧問として世界で活躍する起業家。大学在学中にDtoC通販の会社を設立。中国のベンチャー企業と提携しAmazonや楽天などのECモールで売上ランキング1位のヒット商品を開発する。現在はシンガポールを拠点に、

広告・PRブランディングやSNSを駆使したマーケティング戦略のエキスパートとして、タイ、マレーシア、シンガポール、

日本などの企業にその知見を広めている。


<文・hackjpn 金 二美香>

<写真・Toshiki Tachibana, Ayaka Yamada>


MePicksのCEO 原貴則氏は、当時無名であった一人の女性をYouTuberとしてプロデュースし、
チャンネル登録者23万人を達成。

原氏の手により立ち上げられたYouTubeチャンネル「ぐーたらストレッチ」は、8ヶ月でチャンネル登録者10万人を突破し、チャンネル運営者のSAKURAKOさんは現在数々のトップアスリートが名を連ねる雑誌woman’s SHAPE&sportsに掲載され、有名企業の広告モデルなどを務める。

さらには、日本最大の美容の総合プラットフォーム、@cosmeビューティースペシャリストとしても活躍中だ。この成功は、まさにシンデレラストーリーとも称せられるだろう。

その成功体験を原点として、誰もがビジネスとして活躍できる学びの場を提供しようと、原氏は現在シンガポールを拠点に、女性の社会進出を支援するECオンラインスクール「MePicks」を運営している。

その成功の根底にある鍵は一体何なのか。新たなマーケティングトレンド、PtoC(Product to Consumer)へと移り変わっていく時代の夜明けに、その先駆者として原氏が掴んだ戦略とは一体
何だったのか。原氏の独占取材を通して、その深層を探る。


原氏がビジネスの世界へ足を踏み入れたのは19歳。それから数々のEC事業などに精通してきた。

真剣に起業を志したのは大学一年時。ある日友人から誘われて参加した経営者の交流会が、起業家としての野心を開花させる転機となったのである。

この転機となった背景には、これまで同氏が生まれ育った環境が大きく関係している。

原氏は兵庫県の静かな田舎町で生まれ育った。一番身近な大人は両親や教師であり、仕事に対して苦悩を感じている大人が多かったという。


大学生時代は時給850円のコンビニバイトで月5万を必死に稼ぐ日々。必死で働くものの、手元に貯金は一切残らず、未来の自分を想像した際に絶望を感じた。

また、時間給で働くがゆえに「生産的な仕事」とはかけ離れたことも多かった。

そんな中、心を動かされたのが経営者との出会いであったという。

原氏がそこで見たのは、仕事を楽しむ大人たちの姿だった。自分のやりたいことを見つけ、目標に向かって志高く突き進む。

それは同氏が今まで感じていた「仕事=苦」の概念とは真逆であった。

人生は一度きりである。だからこそ、非生産的な働き方を避け自分の好きなことに挑むために、起業する道を選んだ。

同氏にとっての起業は、単なるビジネスの創造だけではなく、自己実現の旅だった。仕事に喜びを感じ、自分の人生を自分の手で切り開く勇気。

それは彼が経営者交流会で見た大人たちから学んだ、最も貴重な教訓だったのだ。

「今後、起業する/しないという選択肢が訪れたとき、私は前者を選びたい」と強く思ったこと、
今でも色褪せずに覚えています」

これを契機に、同氏は将来の人生設計として独立する道を選んだ。

その後インターン先の学習塾では、入社して3ヶ月で全国1位の営業売上を達成。また通信業でも同じく営業として頂点に立った。

原氏の営業スタイルは、製品やサービスを売ることよりも、自身の魅力と信頼を築くことに重きを置いていた。

その戦略の核心は一つの教えから始まったという。

「営業はものを売るのではない。お客様の将来を一緒に考えてあげるんだ」


原氏はその教えを心に刻み、「聞く」ことが顧客とのコミュニケーションにおいて大切であることを理解した。

また、それぞれの顧客が語る内容を理解し、真剣に共感するよう努めた。その結果、顧客が抱える問題に対する理解を深めることで、それぞれに合った提案ができるようになったという。

さらに営業の成果は、原氏の卓越した行動力からも生まれていた。日々適切な目標を設定し、誰よりも長い時間、営業活動に取り組んだ。1日に14時間も働くことも厭わなかったほどだ。

この強烈な営業力と無尽蔵のエネルギーこそが、彼の起業への道を切り開いた。


会社設立後、当時21歳であった原氏は物販事業を行う一人の知人と出会う。
彼女は自身で中国のECサイトから洋服を仕入れ、フリマアプリで販売していた。

当時オルチャンファッションが世に出回る前の時代に、韓国の安価で可愛い洋服を仕入れて販売し、
月商150万円、利益率50%という成果を上げていた。

「オルチャンファッション」とは、美少女や美男子が着こなしているファッションという意味である。

韓国語の 「オルグル(顔)」+「チャン(最高)」=「オルチャン(顔が最高)」と表され、日本で使われる韓国ファッションには「プチプラ」で可愛いという要素も加わっている。

参照: http://manimani-korea.net/korea-code5/


同氏はこれに着目し、自身も中国のECサイトから商品を仕入れ、Amazonや楽天などのプラット
フォームでの販売を開始。

当時は中国人セラーがまだAmazonに参入しておらず、大学4年時にはビジネスが軌道に乗り、年間売上が4000万を突破。

しかしそんな中、大学4年時は世間では就職先も決まっている時期だ。これまで学業と並行してビジネスを行ってきた原氏の前に、大学卒業後も会社経営を続けるべきか、一度就職して社会経験を積むべきか、二つの意見が対立した。

しかし、同氏の人生設計として独立する意思は揺るぎなかった。

その後大学卒業後も経営者の道を歩み、事業はさらに拡大していった。さらには中国の工場や
ベンチャー企業との直接取引を始め、洋服の自社生産なども展開した。


当時はDtoCの黎明期。DtoCという言葉がまだ世に無かった時代だ。

原氏は業界の先駆者として商品の企画から生産、販売までを行い、より利益率の高いビジネスモデルを構築していった。

当時、EC販売において商品の企画から生産、販売などを自社で行う企業は少なかった。そのため、EC販売のノウハウに関する需要は大いに高まっていた。

そこで、同氏はスキル提供を通して社会貢献の道を切り開いた。

この事業で培った運営ノウハウを広く共有していくことで、幼少期から抱いていた教師の夢を
実現できると考えたのである。

「人にものを教えることは非常に尊いことです。だからこそ教育事業を通して社会貢献していくことに喜びを感じます。自分で起業をして事業を行うことも楽しいですが、やはりノウハウを共有して皆で
一緒に業界を盛り上げていくこの考え方が非常に楽しい
と思いました」

実際に原氏は100社以上の企業に対し、独自のDtoC商品企画、流通、販売戦略やPR戦略を提供した。

開発された商品は、登録者数1000万人以上の人気YouTuberや、TBSの「櫻井・有吉のTHE夜会」で紹介されるなど、大きな話題を呼ぶ。

この結果、会社の年商は10億にまで成長していった。

DtoCの台頭後、昨今新たなトレンドとしてP2Cモデルが注目を浴びている。

このモデルは、個々の人物にブランドやサービスを付け、その人物のブランディング力を最大限に活用して販売を行うというものだ。

例えば「P2Cマーケティング史上最大の成功事例」と言われるYouTuberのヒカル氏が販売するアパレルブランド「ReZARD」は、ブランド単体での売上が25億円程度の年商に達している。

これはP2Cの「広告に頼らず売上を上げる事ができる」という強みを最もわかりやすい形で体現している例だろう。

この新しいトレンドに着目した原氏は、当時無名であった一人の女性を見事にプロデュースした。

原氏の手により立ち上げられたYouTubeチャンネル「ぐーたらストレッチ」は、8ヶ月でチャンネル登録者10万人を突破。


同氏がYouTubeチャンネルを立ち上げた2020年当時は、パンデミック真っ只中。

自粛期間となり、運動不足解消としてダイエット系YouTuberが急激に登録者を伸ばしていった時期である。

その波に乗って、YouTubeチャンネル「ぐーたらストレッチ」は順調にチャンネル登録者を増やしていき、現在では登録者数が22万人を超える人気チャンネルとなっている。

YouTubeチャンネルの成長を機に、そのプロデュース戦略を通してダイエット系YouTuberと多くの関わりを持ち、人のブランディング力を最大限に活用した通販事業、P2Cモデルを展開していった。

原氏はこれまでもDtoC黎明期より誰よりも抜き出た視座の高さを持ち、時代の先駆者であり続けた。その強みはトレンド分析力にある。経済や世界情勢の流れを掴んだトレンド分析が非常に優れ、ユニークな視点からビジネスを展開していくのが原氏の勝ち筋だ。

「通販で失敗してしまう一つのケースとして、企画の段階に大きな原因があります。売れない商品をマーケティングで必死に売ろうとするのではなく、売れる商品を最大限に売ることが大切です」
と同氏は述べる。

シンガポリアンは誕生日によく本をプレゼントしたり、アフターワークで読書を日常的に行うそうだ。

さらには一般人同士で投資の話をしたりなど、金融リテラシーが高い国民性だと原氏は気づいた。

そこで、同氏が日本の教育リテラシーを高めるために取り組んだのが、
ECオンラインスクール「MePicks」だ。

これまでに女性YouTuberの育成や、100社以上の企業へのDtoC商品運営ノウハウの提供といった活動を行ってきた同氏は、特に多くの女性と関わる中で一つの社会的課題を目の当たりにした。

それはシングルマザーの家庭などで起こっている子供の孤食問題である。

この課題を解決するため、同氏はシングルマザーの方々が自身の価値をより高め、社会進出を支援することを目的に、ECオンラインスクール「MePicks」を設立した。

ここでは、ECサイトの運営をサポートするだけでなく、実践的なスキルや知見も提供している。

原氏はこの新たな教育事業を通じて、女性らしく生きる働き方をサポートしていく。

同氏が見据える今後の未来は、この新たな教育事業を通じて女性の社会進出を一層後押しし、
日本を起点にして教育事業を世界へ展開することだ。その実現を通じて、自身のビジネスもさらなる高みを目指す。新たな頂点を目指す彼の進取の精神は、今後ますますの注目を集めることだろう。原氏が教育者としての役割をより一層果たす未来を願ってやまない。

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