コロナ禍の医療崩壊を防ぐ医療経営とは

今回は医療機関の安定的経営基盤構築をサポートする株式会社DiLuca代表の高村氏に独占取材した。
30年の病院勤務で現場がわかる医療コンサルタントとして活躍する高村氏に、解決を目指す医療経営の課題と事業の可能性について迫る。

2021年は新型コロナウイルスの猛威が続き、医療崩壊が現実となった。また、新しい変異種「オミクロン株」の市中感染も確認され、国内の医療体制により一層緊張感が広がっている。

同年の8月には大阪市福島区で「松本病院」を経営する医療法人友愛会が全国初の倒産。負債総額は約52億円であった。倒産の背景にあったのは、新型コロナの感染拡大の影響で外来患者が減少したこと。そして感染患者の入院受け入れで医療体制が逼迫したことで、外来患者の減少に拍車がかかって経営が悪化していたことであった。

そんな追い風を受け、株式会社DiLucaはコロナ禍の医療崩壊を防ぐ医療経営を展開している。

株式会社DiLuca代表を務めるのは30年の病院勤務経歴を持つ高村氏。一般的に、病院で成果を上げ、その後独立し医療コンサルタントを行っているケースは稀であり、一握りの存在だ。

高村氏は病院で事務スタッフとして30年勤務して以来、数々の経営改革に携わってきた。
実際に自治体病院では2年で5億の収支改善を果たし、その後ヘッドハンティングで入った病院も
純利益NO.1。当時は医療業界のメディアにも取り上げられ、全国でも2例目となる注目すべき経営母体となった。

着々と実績を残す高村氏は事務スタッフの育成にも力を入れ、教え子は皆各部署のキーパーソンとして活躍。そこで高村氏が抱いたのは、これまでの知識や経験を多くの人に役立て、国民が安心して医療サービスを受けることができる社会環境を守りたいという気持ちだった。その想いが起業につながったという。

30年の病院勤務を生かした医療コンサルタントの勝ち筋とは

まさに強みは医療スタッフの人材育成にある。特に高村氏は200床以下の中小病院やクリニックといった、通常開業医が経営と臨床、さらには人材の管理といった三役を担う業態に目をつけた。この場合、医師は医療のプロではあるが、経営や人材管理は開業してから学ぶケースも多く、コロナ禍で医療が逼迫している中医師の負担は大きい。

こうした中、そんな課題を解消する秘策として、高村氏は開業医の院長秘書として経営管理をサポートするとともに、事務長代行として医療事務の人材育成を行うのである。こうすることで開業当初の場合、事業を軌道に乗せるタイミングを早めることができ、またその他のフェーズにおいても更に業務効率改善に役立てることもできるため、医師の負担は大幅に減る。

患者に愛される病院には特徴があると高村氏は言う。

「経営基盤を安定させ、さらに病院を発展させたいと思う場合、医師の医療技術ももちろん大事ですが、結局患者さんがなぜその病院を選ぶか、そして何をもって満足として帰られるのかは、多くのアンケートで裏付けされていることに、受付の事務スタッフの丁寧さや、待ち時間の少なさがあります。」

事務スタッフは病院の顔だと言われるように、患者が病院に一歩入ってから出るまでの間、いかに安心して心地よく過ごせる環境を作れるかは重要だ。しかし現状では、そこに教育資源はほとんど投入されていない。

高村氏は病院で求められるホスピタリティに関してさらにこう述べる。

「最近は患者さんと医師の関係は対等になってきてはいますが、白衣を見ただけで血圧が上がる白衣高血圧症という言葉があるほど、やはり先生に対しては威厳があります。そのため多くの場合、多少先生が冷たくても患者さんは我慢されるのですが、受付でもそういった態度をされたら辛いですよね。だからこそ事務スタッフは医療接遇やマナーを守るだけではなく、ホスピタリティが求められます。」

ここでも30年の患者対応経験をもつ高村氏の知恵が生きる。医療接遇やマナーの大切さをしっかり教育することで自然と患者さんの流入数も増え、スタッフ間のコミュニケーションも高まり離職が防げるようになるのだ。

さらにはコミュニケーションが高まることで医療安全面にも効果があるなど、医療接遇を強化することによるメリットは大きい。

即戦力にならない派遣事務スタッフ・人材育成の必要性

実は事務スタッフの教育は大手企業にもよくある業態である。多くの場合、応募者に通信教育を通して資格取得をさせ、人材紹介で病院に派遣させる。高村氏はこれまでにそういった業態の企業とも関わってきたが、そこでの事務スタッフは現場で即戦力になっていなかった。つまり、一般の資格取得の会社が教えていることと現場で必要なことに乖離があるのだ。

厚生労働省が2018年10月に発表した「新規学卒就職者の離職状況」によると、医療・福祉業界の3年以内離職率は37.8%で、離職率の高い産業第4位であった。日常においても、SNSでは医療事務スタッフから不満の声も多く上がっている。その背景には、緊張感のある医療現場での対人関係、業務量の多さや平均収入300万以下であることが関係しているという。

https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000177553_00001.html

高村氏はこういった課題に対して、独自の教育メソッドや個々の人材に適したキャリア構築方法を提案している。

医療経営で日本の安心な医療サービスを守る

コロナ禍における現代、日本の医療の在り方が今改めて見直されている。

現在、日本では8割(癌では9割)の人が病院で最期を迎えている。これは世界中で
日本だけだ。しかし、将来は自宅で最後を迎えることを病院側から打診される日が来るかもしれない。コロナ禍で医療崩壊は現実となっているが、医療は不滅である。今後より一層、日本国民が安心して医療を受けられる社会環境が広がる未来を願ってやまない。

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